本研究では、無月経婦人のLHパルス分泌およびLH-RHテストに対する反応性をから無月経の発現に関する脱感作の存在、およびその臨床的意義について検討を加え以下の成績を得た。 1.無月経症はそのLHのパルス分泌から評価した場合、低パルス性無月経、正パルス性無月経および高パルス性無月経に大別される。 2.従来の視床下部性第2度無月経症は低パルス性であり、LH-RHテストでも低反応であった。すなわちこれらの月経異常では、LH-RHの分泌低下、換言するならプライミング効果の欠如が病態を形成している。 3.視床下部性第一度無月経症は視床下部に機能低下の程度が僅かであり、多くの場合、正パルス性であり、LH-RHテストに対する反応性もよく保たれている。 4.肥満を合併した第一度無月経症では、LHの基礎値は高く、またLHのパルス分泌も亢進していた。しかしLH-RHテストの反応性は逆に低下しており、これらの疾患では内因性LH-RH分泌により下垂体は脱感作していることが示された。 5.PCOもLH基礎値の高値、およびLH-RHテストの過反応が特徴であったが、LHのパルス分泌が多いものほどその反応性は低下した。すなわちPCOでも脱感作が起こりつつあることが示された。 6.最近LH-RHをパルス状に投与し排卵を誘発する方法が開発されているが(パルス療法)このパルス療法は対象疾患により特異的な反応を示した。 以上の成績より、内因性のLH-RH分泌状態は各病態において特徴的なパタ-ンを持ち、またそのパタ-ンの把握は各疾患の治療法を考える上できわめて重要であることを明らかにした。
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