自然交尾後6 1/2日目の雌家兎から得た胞胚を基底膜抽出物質上で組織再構成培養した子宮内膜上皮の上に静置してin vitro着床モデル実験を行ない、胞胚トロホブラスト、透明帯、子宮内膜上皮細胞の変化を電顕によって観察した。 約6時間後に胞胚の内膜上皮への接着率は100%に達し、電顕観察でトロホブラストと内膜上皮の微絨毛が聡明帯内部に伸展し周囲の透明帯が融解しつつあるのが認められた。時間経過とともに透明帯の融解は著しくなり、融解した空間に両細胞間の微絨毛連絡網が形成され、これはトロホブラストと内膜上皮との最初の接着と考えられた。約24時間後には以上の変化はさらに著明となり両細胞の微絨毛は密に接し指状嵌合を形成する。その後、両細胞の細胞膜は密接しデスモソ-ムの形勢と部分的細胞融合が観察されるに至った。 以上家兎着床期胞胚と組織再構成培養した子宮内膜上皮を用いin vivoの着床状態により近似したin vitroの着床モデル実験系を確立し、着床現象が母児両者の細胞双方の密接な相互作用によって成立することが明らかにされた。 今後、両細胞の接着過程における細胞膜レクチン、種々の細胞間物質の変化を検討し、さらに培養液に種々の蛋白質分解酵素阻害剤、プロスタグランディン合成阻害剤、副腎皮質ホルモン、性ステロイドホルモンなどを添加し、in vitro着床に及ぼす影響を検討する計画である。
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