自然交配後61 2日目の雌家兎からえた胞胚を基底膜抽出物質上で組織再構成培養した子宮内膜上皮の上に静置してin vitro着床モデル実験を行ない、胞胚トロホブラストと子宮内膜上皮細胞の相互作用を観察し以下の成績をえた。 約6時間後には胞胚はすべて内膜上皮に接着した。その後トロホブラストと内膜上皮細胞の双方の微絨毛が透明帯内に向って伸展し透明帯は次第に菲薄化し融解した。融解によって生じた空間に両細胞間の微絨毛間連絡網が形成された。これはトロホブラスと内膜上皮細胞の最初の接着と考えられた。約24時間後には以上の変化はさらに著明になるとともに両細胞の微絨毛は密に接し指状嵌合を形成した。その後、両細胞の細胞膜は次第に密接し、遂にはデスモソ-ムの形成と部分的細胞融合が観察され両細胞は不可逆的に接着した。このような変化は胞胚と内膜上皮の接する多数の接点において観察された。以上の胞胚と内膜上皮細胞の接着過程と同時進行して胞胚内の内細胞塊発育、胚盤形成、原始卵黄嚢形成、原始線条形成などの胚の初期発生過程が観察された。 以上家兎着床期胞胚と組織再構築した子宮内膜上皮細胞を用い、in vivoの着床状態に近似した着床モデル実験系を確立し、着床現象が母児両者の細胞双方の密接な相互作用によって成立することを明らかにした。またこの実験系で胚の初期発生が円滑に進行することを観察し、この実験系がin vivoにおける着床期の現象を再現出来ることが立証された。今後この実験系を用いてさらに詳細な着床機序の研究を推進していく計画である。
|