受精卵の子宮内膜への着床は妊婦成立の起点であり臨床的には不妊や避妊などに直接関わりのある現象である。しかしその機序の詳細については不明な点が多い。 本研究はin vitroで胞胚が子宮内膜に着床するような実験系を作成し、胞胚と子宮内膜の相互作用を形態学的並びに生化学的に観察し、着床機序を明らかにするとともに着床に必須の因子、着床促進因子、着床阻害因子の解明を目的とした。 実験材料は、家兎の着床期胞胚と子宮内膜を用い、実験方法は、すべてin vitroで行ない、以下の成績をえた。 1.子宮内膜組織の上皮細胞と間質細胞の分離培養 内膜組織を細片化後、酵素分散、分別濾過、短時間培養の一連の処理により上皮細胞と間質細胞の分離と純培養をうることに成功した。 2.in vitroにおける立体的子宮内膜組織の構築 分離純培養した上皮細胞、間質細胞をコラ-ゲン膜の両面に培養し、生体内と同じ内膜組織腰構築を作成することに成功した。さらに複数の接着因子から成る基底膜抽出成分を用いて同様の試みを行ない、一層生体内の状態に近い組織構築を作成することに成功した。 3.in vitro着床モデル実験 着床期胞胚を組織構築した子宮内膜の上皮細胞表面に置きin vitro着床モデル実験を行なった。胞胚は約6時間で内膜上皮に接着し、トロホブラストと内膜上皮細胞の両者の相互作用によって透明帯融解、次いで両細胞間の微絨毛架橋形成、さらに微絨毛の指状嵌合の形成に続いてデスモソ-ム、部分的細胞融合によって両細胞は不可逆的に接着した。この過程と同時進行で胚発生が進み原始卵黄嚢、原始線条形成が認められた。
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