胎盤は胎児と母体の接点に存在する臓器であり、母体の胎児拒絶を調節していると考えられる。我々は胎盤よりこの調節を司どる免疫調節因子が産生されている事を報告し、絨毛癌細胞よりも同様の物質が産生されている事を報告してきた。今回我々はこの物質の免疫反応調節機序を検討した。この物質はヒトT細胞のマイトジェンによる増殖反応を抑制し、その抑制は反応細胞の傷害によるものでなく、生理的作用による結果であった。この機序を詳細に検討する為、T細胞をフォルボルエステルとカルシウムイオノフォアで刺激する糸を用い、T細胞のILー2依存性経路にこの因子の及ぼす影響について検討した。この経路は活性化相と増殖相の2相に分けられる事から、先ずILー2リセプター発現とILー2産生へ及ぼす影響する検討した。ILー2リセプターの検定は抗Tac抗体を用いてFACSでその表現パターンを解析し、ILー2産生量はILー2依存性増殖細胞のCTLLー2を用いて検討した。正常人末梢血T細胞を用いた我々の研究では、この両反応ともに影響を受けず、即ちT細胞活性化時のプロテインキナーゼCかCa^<2+>チャネルの作用を阻害しない事が明らかとなった。次にフォルボルエステルとカルシウムチャネルで活性化して作製したT細胞芽球をリコンビナントILー2刺激による増殖反応をそのDNA合成で検討すると、我々の因子はこの反応を完全抑制した。この事はILー2とILー2レセプターを介した細胞内刺激伝達糸に作用し、その情報伝達を阻害している事を示唆している。ラベルした^<125>IーILー2を用いたリセプター結合試験に及ぼす研究では全く阻害しない事から、ILー2とILー2リセプター結合後の細胞内刺激伝達系を抑制している事が示唆された。この事実は高親和性ILー2リセプターを表現するConA T細胞芽球を用いた実験よりも確認された。以上の現象の妊娠現象や担癌宿主に於ける意義について現在種々の角度より検討を加えている。
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