研究課題/領域番号 |
63570779
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松崎 昇 大阪大学, 医学部, 助手 (30199781)
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研究分担者 |
佐治 文隆 大阪大学, 医学部, 講師 (90093418)
大橋 一友 大阪大学, 医学部, 助手 (30203897)
古山 将康 大阪大学, 医学部, 助手 (00183351)
亀田 隆 大阪大学, 医学部, 助手 (70204641)
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キーワード | Pregnancy / Immunoregulation / Trophoblast / Maternal T cells / LAK cells |
研究概要 |
胎児・胎盤系は父方組織適合抗原を表現しているので、母体にとっては異系移植片となる。妊娠の成立と維持には、これらの抗原によって惹起される免疫応答を調節する機構が、母児間の接点に作動していると考えられる。この機構を解析するために、我々は胎盤ぼ絨毛細胞に注目し、その産生する免疫抑制物質の生物活性をヒト免疫応答系を用いて検討した。絨毛癌細胞株は正常毯毛細胞と同一の物質を産生しているので、我々はその培養上清を用いた。免疫応答の中心的役割はT細胞が担うことから、その物質がヒトT細胞の活性相・増殖相・分化相へ及ぼす影響を調べた。T細胞をホルボルエステルとカルシウムイオノフォアで刺激すると、ILー2依存性増殖反応を示す。この系へ上清を添加すると、活性化相でみられるTac抗原発現とILー2産生は抑制されなかったが、増殖反応が抑制された。この物質の作用部位は、ILー2とILー2レセプタ-結合後の細胞内情報伝達経路であった。高濃度のホルボエステルでT細胞を刺激すると、IL2非依存性増殖をするが、抑制物質は活性化相を抑制せずに増殖相を抑制した。このT細胞増殖反応特異的抑制により、父方抗原反応性T細胞は生成できなかった。一方、T細胞がIL2によりLAK細胞が誘導されるが、その系への影響も検討した。LAK細胞にはこの物質で生成が阻害される細胞群と生成が阻害されぬ群とが存在することが明らかになり、LAK細胞の分化相は抑制しなかった。T細胞とLAK細胞は、活性化されると胎児・胎盤系を拒絶し、流産に関与する重要な細胞となるが、絨毛細胞由来免疫抑制物質はそのいずれの活性も調節している。以上から、絨毛細胞は抑制性液性因子を産生し、母体の細胞性免疫の増殖相のみを局所的に調節することにより、妊娠の成立と維持に重要な役割を果たしていることを明らかにした。
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