本研究では扁平上皮癌のTAー4発現につき、特に細胞分化度との関連性から検討が加えられたが、次の如き成績が得られた。 1.細胞の5-メチルシトシン量を変化させ、分化に影響を与える5-アザシチジンで扁平上皮癌由来の細胞株SKGーIIIa細胞を処理した。その結果TAー4放出量の著しく高いBー5細胞株を得た。しかし、TAー4抗体を用いた免疫染色またはフロ-サイトメトリ-による検討では、Bー5細胞の細胞中TAー4含有量は他の細胞株(代表としてAー5細胞を用いた)に比べて明らかに低く、細胞のTAー4合成能と放出量の解離が示された。 2.Aー5細胞とBー5細胞におけるTAー4放出能の相違につき、TAー4の中でも特に細胞からの放出に関連深い酸性分画につき検討した。既ち、酸性分画に特異的な抗体317を用いてオ-トラジオグラフィ-を行った結果、Bー5細胞における酸性分画の合成亢進が認められ、細胞からのTAー4放出には酸性分画の発現が関係深いことが示された。 3.Aー5細胞とBー5細胞の性格の相違につき、ヌ-ドマウスにおける腫瘍形成能ならびにMatrigelを用いたinvasion assayにより検討したが、Bー5細胞はAー5細胞より明らかに強いMatrigel浸潤能を示し、またヌ-ドマウスにおける腫瘍形成能もBー5細胞が強い傾向を示した。 TAー4の発現と細胞の性質の関係については現在検討が進められているが、最近TAー4のcDNA構造からもTAー4と細胞接着性との関連性が示唆されており、今後の展開が期待される。 本年度の研究で得られた研究成績は次の如くである。
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