研究課題
従来の胎動検出システムにくわえ、63年度予算では新たにハードディスクその他を備え、その結果大量のデータを高速で分析可能となった。これまでに、各種胎動パターンの出現頻度、胎動の種類と母体の胎動自覚,妊娠週数と胎児心拍数パターンの推移、眼球運動の確実な検出法などについて検討した。その結果(1)胎動回数と妊娠週数との相関は低く、r=-0.089であり、妊娠週数が進行しても、有意には増加しないこと、(2)しかし妊婦は強い胎動ほどよく認識できるため、妊娠週数の進行とともに、胎動自身の強さが増加するため、妊婦の胎動自覚回数が増加すること、(3)胎動と胎児呼吸運動は独立して生ずることが多く、同時に認められることは3%と非常に少ないこと、(4)胎児呼吸運動には規則的なパターンと不規則なパターンなどがあり、とくにREM期には不規則なパターンが出現しやすいことが確認された。(5)一方、一分あたりの呼吸回数に関しては、妊娠34週前後が最も多く、肺の機能的成熟との関係が示唆された。(6)眼球運動に関しては、REM期とnon REM期および覚醒期のパターンにつき分析し、胎児心拍数との関係が分析可能であった。その結果、正常妊娠におけるnon REM期での眼球運動回数は一分平均0.57回に対し、REM期には、9.74回、覚醒期には4.30回であり、また眼球運動の速度に関しては、REM期に速いことが確認された。今度の問題点としては、胎動、眼球運動の他に、嚥下運動や腸管運動、さらに排尿、音響刺激に対する反応などについての、定量的な分析が必要である。これらの結果をふまえて、過去の症例を分析してみると、重症な胎児中枢神経系の傷害や、羊水過多、過少の場合に、特殊なfetal behaviorしめすことが判明しており、今後この様な特殊な症例を集積することにより、新しい臨床診断の判定基準を確立できる。
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