研究課題/領域番号 |
63570787
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
下川 浩 九州大学, 医学部, 講師 (30128037)
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研究分担者 |
坂井 和裕 九州大学, 医学部, 助手
前田 博敬 九州大学, 医学部, 助手 (20199631)
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キーワード | 妊娠中毒症 / 妊娠 / 微小循環 / 静脈壁伸展性 / 細静脈 |
研究概要 |
本年度は次の二点につき検討を加えた。1.生体ビデオ顕微鏡システムを用いて眼球結膜細静脈内の赤血球柱の妊娠中毒症妊婦での特徴とその血流速度との関連について検討し、2.WaterーPlethysmographyを用いて肘静脈での静脈血管壁伸展性の妊娠及び妊娠中毒症での変化の観察を行った。 1.眼球結膜細静脈内の赤血球柱の状態は、妊娠中期には非妊時の均質な外観から微細な赤血球集合現象が見られる血流に変化し、妊娠末期には血漿解離を伴うSludgeが見られるようになる。妊娠中毒症では更に赤血球柱の状態は棒状に一塊をなしかつそれが血漿解離で分離される独得の状態を示した。このような流血中の赤血球の状態と血流速度との関連を見ると、軽度から中等度の赤血球集合現象が見られるものでは1.18±0.40mm/secであるが、sludgeのあるものでは0.11±0.08mm/secと著しく血流速度が減少しており、加えて妊娠中毒症では赤血球柱の動きは観察時間中、停止していた。細静脈の血管径の検討では妊娠中毒症妊婦では血管径の拡張が見られないことから、上記血流速度の減少とあわせて組織への血流量は著しく障害されていることが示唆される結果であった。 2.眼球結膜細静脈の拡張障害が観察されたことから、より大きな静脈系血管での拡張障害の有無を検討する為に肘静脈での静脈壁伸展性の変化を検討した。静脈壁伸展性は、非妊時の3.21±0.49ml/100mlから妊娠後期では4.13±0.61ml/100mlと有意に増加する。しかし、重症妊娠中毒症妊婦では2.74±0.51ml/100mlと正常妊娠で見られる静脈壁伸展性の増加が欠如していた。このことから、妊娠中毒症では細動脈の彎縮と共に静脈系の血管でも拡張の障害が見られることが明かとなった。
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