研究概要 |
多衰胞性卵巣症候群においてはド-パミン機構の失調があることが前年度の研究により推測されたが、本年度はそれを臨床的立場から詳細な内分泌的検討をおこなうと同時に,ラットを用いて卵巣はin vitro系での実験を行って、卵巣レベルにおけるド-パミン機構の意義について検討を行った。多衰胞性卵巣症候群にたいしド-パミン作動薬であるブロモクリプチンを投与すると、prolactinのみならず、CH基礎値も下降、正常化し、LHRHに対するCH分泌も正常化した。一方FSHはその基礎値,LHRH反応性のいづれもが影響をうけなかった。排卵は80%の症例づみとめられ、不妊症例の20〜50%に妊娠が成立するのが多衰胞性卵巣症候群の各病型においてみとめられた。この間、従来の排卵誘発療法に多発する多胎妊娠や卵巣過剰激症候群の発生は一切みられなかった。これらのことは多衰胞性卵巣症候群の病因にド-パミン機構の失調が深く関与していることを意味し、その補充療法が病因的治療であることを意味するものを考えられた。またそれにより高い排卵率と妊娠率が卵巣過剰激症候群という副作用なしにえられたことはそれを補充する所見であると考えらる。卵巣のin vitro系での検討では、顕粒膜細胞意味細胞のいずれもがド-パミンに反応して20αーoltprogesteroneーprogesten oneの分泌を亢進した。その作用は抗ド-パミン作動薬であるドンペリドンによって抑制をうけることも明らかとなった。このことは多衰胞性卵巣症候群におけるド-パミン失調の部位が必ずしも中枢のみに存在するのでなく、末梢の卵巣レベルにおいてもみられる可能性を示唆するものと思われるが、この点については今後の検討を要する。
|