研究概要 |
胎児発育における成長因子の意義を明らかにするため,胎仔における成長因子,とくにnerve growth factor(NGF)の遺伝子発現についての研究を試みたが,胎仔神経組織におけるNGFmRNAの発現量がきわめて少量であるためと考えられるが,十分な実験結果が得られなかった。そこで,その解決法の1つとして,RTーPCR(reverse transcriptaseーpolymerase chain reaction)を用いて分析することとした。胎仔組織での検討の前に,昨年度まで実験を継続しているヒト胎盤でのNGFmRNAの発現をRTーPCR法により試みた。胎児の発育は、胎児ー胎盤系という系の存在でも明らかなように,胎盤の機能と不可分の関係にある。従って,胎盤における成長因子の分析は、胎児発育の調節機構を明らかにしていく上で重要と考えられる。 RTーPCRはCellyらの方法に準拠して行い,RTによるcDNAの合成は、total RNA,PCR buffer,dNTPs,rebonuclease inhibitor,random primer,RTの反応液中で行い,この反応生成物をPCR buffer,DNA polymerase,センスおよびアンチセンスprimer ととも denaturation,Annealing,extension にて30cycle施行した。このPCR反応生成物を低分子核酸分析用agarose gel 中で電気泳動した。このようにして,ヒト胎盤から抽出したRNAからRTによって合成されたcDNAに対してPCRを30cycle行なった結果,約500baseを認め,プライマ-のデザインから予測される結果と一致し,ヒト胎盤組織中にNGFmRNAが存在することが証明された。 この胎盤における分子生物学的用手を胎児(仔)組織でさらに応用していくことが今後の課題として残った。
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