研究概要 |
在宅用胎児モニタ-を従来のパソコンに代えて家庭用テレビゲ-ム機に簡素な1/0モジュ-ルを附加したものに変更しコストダウンと操作の単純化に成功した。テレメ-タ方式の在宅用胎児ドプラ信号は細かい手直しに止め、無線周波数70-900MHzのFM/FM方式二重変調で送信した。サンプリングレ-ト8msec、TV画面上で心電、ドプラ信号の表示が可能な無線テレメ-タを採用し、母体と胎児の電気安全性を本質的に維持した。無線の実用到達距離は約10mで、送信機を低電力化しリチウケ電池使用で連続動作時間は約40時間とした。TV画面での表示はサンプリングレ-ト8msec、表示時間幅約2秒、振幅分解能127(7ビット)、TVの音声チャンネルにサブキャリヤ音を出力させTV画面上にドプラ原信号を描出させた。胎児ドプラ信号は、診断に必要な情報がすべて読取り可能で、装置内部では表示波形よりはるかに高い16ビットで実用波形が得られるので安定した心拍測定が可能となった。本装置の実用性はサブシステムのソフトウェア開発に左右され、すでにハ-ドウェア機能の実証試験用ソフトの開発が終了した。附加ソフトとして、画面フリ-ズ,スタ-ト、エンベロ-プ、処理瞬時心拍数の実時間計互、心拍数図の内部蓄積と必要時点での呼出し表示などを開発し、臨床応用の実用化試験が確立された。本装置開発のネックとなったのは、いわゆるファミコンの雑音電波放射障害であり、無線テレメ-タの到達距離は、この特性によって規定されるのが現状である。また、ゲ-ム機特有の内部構造とプロトコ-ルの特殊性があるため、目的のソフトウェアコ-ディングには特殊な知識が要求され、しかも、研究者には無縁なゲ-ムソフトなどとして存在していて、ソフト開発には大きな困難があった。しかし、これらの制約はあるものの、安価な妊婦と胎児の在宅ケアシステムの開発に成功し、大きな利用価値があることが確認された。また、基本的にこのシステムは、ソフトの多くを在宅老人共モニタシステムと共通なので、今後の開発費を最小限にすることできる。さらに、最適な通信モデムを附加し、小型のパソコンなどを利用した簡易な端末へのデ-タ転送が可能となった。これによって、高度処理を中央のシステムに移管し、定期的、または必要時にセンタ-と双方向通信を行なう安価な在宅胎児管理システムが実現し、臨床的にも社会医学的にも大きな利用価値をもつことが明らかとなった。
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