1)Seropositiveなモルモット蝸牛内に、Guinea Pig Cytomegalovirus(GPCMV)を接種した場合、8日目ては、seronegativeに同様の接種をした時(細胞浸潤、感染)と異なり蝸牛には炎症細胞浸潤がほとんどおこらない。かかる動物の感染防御機構の一翼を内リンパ嚢が担っているとの仮説のもとに内リンパ嚢を検索した。内リンパ嚢内腔、ならびに嚢周囲腔にリンパ球、マクロファ-ジの浸潤が認められたがそれ程、高度ではなく、ウイルス抗原は認められなかった。内リンパ嚢内腔には、正常の状態でもリンパ球、マクロファ-ジを中心とした浮遊細胞が存在するてことは、既にLask-Andersonらにより知られており、これらの細胞浸潤は興味ある所見ではあるが蝸牛感染防御という立場から意義のあるものかどうかは更に例数を増やし正常例と比較検討しなければ確定的なことは言えないと思われた。また今回は8日目に断頭したが、1日目〜14日目位までのtime course studyも必要であると思われた。一方Seronegativeな動物では蝸牛軸静脈からの細胞浸潤が認められ、内耳(特に蝸牛)における感染防御機構の主役は、蝸牛軸静脈を介しての全身免疫系と、内リンパ嚢による局所免疫の2つと思われた。蝸牛軸静脈と内リンパ嚢がウイルス感染の際に、それぞれどの程度関与するかについては、seronegativ、seropositive各群における、やはり日数でふったtime course studyが必要である。 2)免疫電顕法によるウイルス抗原検索では骨ラセン板直下の浸潤細胞内(ウイルス粒子、dense body)にウィルス抗原陽性で、この骨の間隙を通してウイルスが蝸牛軸に侵入していくと思われた。
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