研究概要 |
上咽頭癌のモデル細胞であるA_2L/AH細胞を以前に我々は試験管内で培養することに成功した。今回、この細胞をクローニングすることにより、EBウイルスゲノム陽性細胞CI-1とCI-2、ゲノム陰性細胞CI-654を作ることに成功した。この3種類のクローン細胞のEBウイルスDNAの解析の結果、CI-1,CI-2細胞は親株であるA_2L/AH細胞と同一のウイルスDNAを保有していることがわかった。一方、CI-654に関してはEBウイルスDNAの存在を検出することができなかった。また染色体の分析の結果では、ほぼ同じ染色体パターンを有していた。 これらの細胞株を使用して、ヌードマウスの腫瘍原性を調べた結果、EBウイルスゲノム保有細胞全ては、腫瘍原性を有しており、しかもその病理組織学的分類では、上咽頭癌と同一の未分化癌であった。しかしEBウイルスゲノム陰性細胞では腫瘍原性を有していなく、EBウイルスゲノムの存在が、上皮細胞の腫瘍原性に大きく関与していることがわかった。 今後の研究の展開においては、ヌードマウスへの放射線照射後の腫瘍原性の相異について研究を行い、CI-654細胞の腫瘍原性の獲得をめざし、その病理組織学的検討を行う予定である。その結果、EBウイルスのゲノムの存在が、病理組織の悪性化の増強をプロモートしているかを調べる予定である。
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