PDP-11/23電子計算機をOSRT-11によって制御し、音声合成装置DEC Talkを駆動し、1桁数値10種を含む2モーラ有意味日本語語音列を合成した。この際、合成語音の基本周波数、超分節的変動ならびに持続時間は、現行の日本オージオロジー学会制定57式音盤の語音のそれらの値と、可α的に一致させた。合成した語音は一旦フロッピーディスクにディジタル記録した。 次いでPDP-11/73電子計算機を同じくRT-11に2制御し、ソフトウェアシステムILSを駆動し、鋭い遮断特性をもつ楕円フィルターを作成した。このフィルターを用いて上記の合成語音に周波数歪みを加え、母音の第一フォルマント(F1)、第2フォルマント(F2)を除いた語音列など、各種のひずみ語音を作成した。これらの合成語音もまた、一旦フロッピーディクスにディジタル記録した。 上記の合成語音はILSのコマンドによってD/A変換し、DATレコーダーに転送記録し、聴取実験に利用した。聴取実験の対象は正常聴力をもつ成人10名ならびに各種感音性難聴患者10名であった。これらの被験者に、上記で合成された各種合成語ならびに合成ひずみ語音をヘッドホンを通して聴取させ、語音聴力検査を施行した。 正常聴力をもつ被験者では、合成母音による明瞭度は100%であり、肉声と同様であった。2モーラ語音でもほぼ100%の正答率が得られた。母音のF1を除去した場合にも、F2を除去した場合にも、ほぼ90%の正答率が得られた。感音性難聴を有するものでは、語音聴力検査の成績が正常聴力をもつものより低く、また合成語音に対する語音聴力は、肉声語音に対するそれよりも更に低下していることが確かめられた。 以上の成績は、語音聴力検査用の検査語音として、2モーラ合成語音を含む合成語音を使用することの妥当性を示すものと思われた。
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