研究課題
昭和32年から昭和58年までの上顎洞癌新鮮症例845例について、初診時の進展度と5年生存率との関係を治療方法など多数の関連因子についても検討し、もって国際分類の妥当性を検証することを目的とした。研究の基盤は患者の正確な追跡調査であり、分年度も数回大阪へ出張し、大阪大学病院ないし大阪回生病院において、診療録の閲覧および患者の診察を行った。収集された資料は入力用紙に記入し、当教室保有のパーソナルコンピュータに入力したが、今年度研究費によってイメージリーダを購入した。また統計処理用データベースソフトとして、今回もっとも利用価値の大きいとされているαBASEIIIPLUSを購入、さらに日英ワープロソフトとしてDUETを購入して、研究環境を整備した。腫瘍登録と生存率計算用にαBASEIIIPLUSの中で新にプログラムを作成し、ほぼ完成させることができたので、それを用いた統計解析を行うことが可能となった。845症例の国際分類T別集計結果はT1:13例、T2:240例、T3:305例、T4:287例となり、頚部転と遠隔転移を総合した臨床病期分類はStageI:13例、StageII:204例、StageIII:391例、StageIV:237例となった。臨床期別5年生存率はStageI:69%、StageII:43%、StageIII:33%、StageIV:14%となり、Stageの進む程明らかに成績が悪く、Stageが予後に関連する重要な因子であることが明らかとなった。したがって大局的には国際分類の妥当性は検証し得たと考えられる。詳細に検討した結果として、後篩骨洞進展例101例の5年生存率は27%であり、StageIIIとStageIVの中間に位置するので、進展度判定に際しては深く篩骨洞に進展した症例のみT4とするべきである。また皮膚、反対側に進展した26例の5年生存率は15%と悪く、国際分類ではT3であるが、むしろT4に判定するよう改正を申入れるべきである。
すべて その他
すべて 文献書誌 (3件)