平成元年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1)免疫複合体:掌蹠膿庖症60例、胸肋鎖骨過形成症22例について、血清中免疫複合体を検索した。正常対照例の免疫複合体量が1.4+0.8ugAHGeq/mlであったので、3.0ugAHGeq/ml以上を陽性例とした。免疫複合体陽性例は掌蹠脳内膿庖症では21例(35%)、胸肋鎖骨過形成症では8例(36.4%)であった。免疫複合体陽性例21例のうち、6ヶ月異常の経過観察が可能であった掌蹠膿庖症12例について、扁桃摘出後の血清中免疫複合体の変化を検索すると、扁摘3ヶ月後には7例(58%)で免疫複合体値の低下が認められ、6ヶ月後10例(83%)で低下が認められた。 2)抗ケラチン抗体:掌蹠膿庖症50例、正常対照20例について、血清中抗ケラチン抗体を測定した。陽性率はIgG抗ケラチン抗体50%、IgM抗ケラチン抗体66%であった。平成元年度の研究ではこれらのパラメ-タ-が扁摘後の経過と皮疹の変化と如何に関連するかを追求した。抗ケラチン抗体のうち、IgG抗体およびIgM抗体を検索すると、IgG抗体は掌蹠膿庖症患者のいずれの群にも認められたが、IgM抗体は扁摘有効群、即ち皮疹の改善が認められた群でのみ検出された。さらに扁摘後のIgM抗体の経時的変化をみると、IgM抗体陽性例27例において、皮疹消失群で4/5例(80%)、著効群で11/12例(92%)、および有効群で4/10例(40%)において抗ケラチンIgM抗体価の低下が認められ 以上より平成元年度の研究では、病巣性扁桃炎患者血清中には免疫複合体および抗ケラチン抗体の有意な上昇が認められ、更にそれらの値が扁摘後に低下していく事実を見いだした。この成績から、本症の発症に免疫複合体および抗ケラチンIgM抗体が極めて重要な役割を演じており、さらに扁桃が免疫複合体の産生を誘導している可能性、および抗ケラチンIgM抗体を産生している可能性が高いことが推測された。
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