研究概要 |
1)免疫複合体、抗ケラチン抗体:掌蹠膿疱症患者60例、胸肋鎖骨過形成症患者22例について血清中免疫複合体を検索し、また掌蹠膿疱症患者50例について抗ケラチン抗体を検索し、扁摘後の症状の変化と免疫複合体および抗ケラチン抗体の術前陽性率との関係を比較検討した。免疫複合体は3.0μgAHGeq/ml以上を陽性とし、抗ケラチン抗体は0.09OD(IgG),0.33OD(IgM)(405nm)以上を陽性とした。免疫複合体陽性例は掌蹠膿疱症21例、胸肋鎖骨過形成症8例で、6ケ月以上の経過観察が可能であった掌蹠膿疱症18例および胸肋鎖骨過形成症6例について、扁摘後の臨床症状の改善度と術前の免疫複合体の陽性率との関係を検索すると、皮疹消失例14.3%,著効例45.5%、有効例40%,不変悪化例18.2%であった。有効以上例では38.6%の陽性率を示し、不変悪化例の2倍以上の陽性率を示した。更に胸肋鎖骨過形成症でも有効以上例41.7%,不変悪化例0%の陽性率を示し、術前に免疫複合体が陽性であった例で、扁摘後の臨床症状の改善率が高いことが判明した。一方抗ケラチン抗体の検索ではIgM抗体陽性例が33例(66%)で、皮疹の改善度との関係をみると、皮疹消失例、著効例、不効例ではいずれも70%の症例が陽性を示したが、不変悪化例では陽性例は認められなかった。扁摘後の変動をみると、消失例では67%、著効例で73%、および有効例で33%において抗ケラチン抗体IgM抗体価の低下が認められた。掌蹠膿疱症に対する扁摘効果の術前診断基準として、扁桃誘発試験、扁桃打ち消し試験、病歴、扁桃陰窩細胞診、に上述の免疫複合体値と抗ケラチン抗体価(IgM抗体)を組み入れて、いずれかが陽性を示した45例について術前診断率を検討すると、陽性的中率は95,%偽陽性率は5%,陰性的中率は90%,偽陰性率は10%と非常に高い診断率を示し、免疫複合体および抗ケラチン抗体が、掌蹠膿疱症に対する扁摘効果の術前診断のパラメ-タ-として非常に有用であると考えられた。 2)病巣性扁桃炎(掌蹠膿疱症)患者の扁桃における画像解析システムを用いた免疫担当細胞の定量的検索:掌蹠膿疱症患者群においてIgG,IgM,IgD陽性細胞が有意に増加しており、また扁摘後の皮疹の改善度との関係では、扁摘有効群で、IgG,IgM,IgD陽性細胞と、CD4(helper/inducer T cell)陽性細胞の有意な増加が認められた。 以上より平成2年度の研究では、病巣性扁桃炎患者の扁桃では、活発な免疫応答の存在が示され、病巣性扁桃炎患者における免疫複合体および抗ケラチン抗体の産生に重要な役割を果たしている可能性が考えられた。さらに患者血清中の免疫複合体および抗ケラチン抗体と他の検査を組み合わせることにより、病巣性扁桃炎における扁摘効果の術前診断が可能となると考えられた。
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