ストレス負荷に用いる実験動物に関しては、マウス、モルモット、ラットについて検討してみたが、鼻粘膜の摘出・処理のし易さ、ストレスの負荷のし易さ等からラットを用いるのが適当と考えた。 当初のストレスは、胃粘膜におけると同様に、鼻粘膜にも潰瘍形成をもたらすのではないかと考えた。そこでラットを用いて水漬拘束ストレスを24時間以上負荷してみたが、肉眼的に胃粘膜に明らかに潰瘍形成を認める場合も、鼻粘膜にはその様な変化を認めることは出来なかった。パラフィン包埋切片標本を観察しても潰瘍形成の傾向は認めることは出来なかった。鼻粘膜には胃粘膜の場合の様に塩酸という攻撃因子がないのであるからこのことは当然といえば当然かも知れない。 次に電子顕微鏡レベルでの変化がないかを検討してみたところ、ストレス負荷により#細胞の機能が亢進している様な印象が得られた。しかしこれを定量的に明確にするには連続切片標本を作成する必要があることから、なかなか困難であることが判明した。そこでアルシアンブルーに拠る粘液染色を施してから、鼻粘膜の剥離標本を作成して、光学顕微鏡で観察する方法を採用した。この方法により、やはり水漬拘束により鼻粘膜の#細胞の機能が亢進することが確認された。 現在、これらの結果を正確に捕らえるために画像解析装置を用いて、データーを処理しつつある。また水漬拘束というストレス負荷条件では水分摂取量の低下に拠る脱水が鼻粘膜に変化をもたらす可能性も否定できないので、電撃刺激などの他のストレス負荷による実験を施行したところほぼ同様の結果を得た。更にトランキライザーなどの前投与に拠り#細胞のストレスによる機能亢進が抑制されるか否か、下気道への影響はあるか否か等について検討している。
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