音響性感音難聴の発症機序と治療に関する研究

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570816
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 中井 義明 大阪市立大学, 医学部, 教授 (10046998)
• 研究分担者: 桝谷 治彦 大阪市立大学, 医学部, 助手 (10190357) ; 小西 一夫 大阪市立大学, 医学部, 助手 (50145801) ; 大橋 淑広 大阪市立大学, 医学部, 講師 (60160602) ; 山根 英雄 大阪市立大学, 医学部, 講師 (60145787) ; 長 寛正 大阪市立大学, 医学部, 助教授 (60128741)
• キーワード: 強大音 / 感音難聴 / 内耳血管 / 血流 / 走査 / 透過電子顕微鏡

研究概要

騒音性難聴のオ-ジオグラムの特徴として、古くよりC^5-dipが知られている。
受傷性に左右差あるいは部位差がある原因として、蝸牛内諸組織への血液供給の差が考えられる。すなわち蝸牛への血管は総蝸牛動脈より固有蝸牛動脈と前庭蝸牛動脈に分れ、蝸牛に分布するがこの両者は蝸牛下部回転にて吻合している。この部分は易受傷性と推定された。ラセン器を栄養するラセン血管は蝸牛軸よりの微細動静脈がループをなして十字型に吻合している。この間隔は下部回転が上部のそれに比して長い。血管条、ラセン靱帯に分布する放射状細動脈は下部回転が上部回転に比し粗である。この解剖学的構造は需要に対する供給が上部回転の方が多い事を示している。動物に強大音を与え、血管鋳型走査電顕像や薬物の血管条への移行実験などより、これらを裏付けた。
音響負荷時の内耳血流動態については、音響負荷条件あるいは測定方法により、各報告者間で一定の見解は得られていないが、強大音負荷早期では物質代謝の亢進により、蝸牛内CO_2の上昇に伴い蝸牛血流は増加し、その後除々に減少すると考えられる。
強大音(100〜125dbspc)3時間負荷直後のモルモット内耳血管鋳型走査電顕像観察では、ライスネル膜付着部の蝸牛外側壁、ラセン隆起各部の毛細血管、ラセン血管、鼓室唇付近のラセン血管およびラセン板縁の血管、血管条毛細血管の一部にvasoconstrictionを思わせる血管の狭小、拡大化がほぼ全例にみられた。これら蝸牛内循環障害が臨床上みられるTTSの原因の一部をなしていると考えられた。
同条件の強大音刺激により閾値が20dB上昇した直後の聴毛は同列あるいは各列隣接聴毛間の連結繊維が大部分消失し、聴毛間の接触がみられた。この所見は可逆性を持つと推定された。

研究成果

• [文献書誌] Y.Nakai: Acta Otolaryngal. Suppl.447. 23-27 (1988)
• [文献書誌] 中井義明: 公衆衛生. 52. 142 (1988)
• [文献書誌] 中井義明: Ear res.Jap.19. 350-352 (1988)
• [文献書誌] 中井義明: Ear res.Jap.19. 99-101 (1988)
• [文献書誌] 中井義明: Aadiology Japan. 31. 603-604 (1988)
• [文献書誌] 桜井敏部,中井義明,山根英雄,小西一夫: Equili brium Res.Soppl.4. 111-114 (1988)
• [文献書誌] 八川公爾,山根英雄,加藤匠子,中井義明: Equili brium Res.Suppl.4. 104-108 (1988)
• [文献書誌] 長寛正: Ear res.Jap.19. 7-9 (1988)
• [文献書誌] H.Yamane: Advances in Oto-rhino-laryngolagy. 42. 123-128 (1988)
• [文献書誌] H.Yamane: Acta Otolaryngol. Suppl.447. 28-35 (1988)
• [文献書誌] 山根英雄,小西一夫,八川公爾,岡田博文,松田泰明,中井義明: 免疫アレルギー. 6(2). 64-65 (1988)
• [文献書誌] 山根英雄,小西一夫,八川公爾,岡田博文,松田泰明,中井義明: Audiology Jopan. 31. 81-82 (1988)
• [文献書誌] 中井義明: "音響性聴器障害ーその基礎と臨床ー" 金原出版,
• [文献書誌] 中井義明: "感音難聴の保存療法" 金原出版,