音響性感音難聴の発症機序と治療に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570816
• 研究機関: 大阪市立大学
• 研究代表者: 中井 義明 大阪市立大学, 医学部, 教授 (10046998)
• 研究分担者: 枡谷 治彦 大阪市立大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (10190357) ; 小西 一夫 大阪市立大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助手 (50145801) ; 大橋 淑宏 大阪市立大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 講師 (60160602) ; 山根 英雄 大阪市立大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 講師 (60145787) ; 長 寛正 大阪市立大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 助教授 (60128741)
• キーワード: 音響 / 内耳傷害 / 蝸牛血流 / 有毛細胞 / 細胞培養 / 誘発耳音響放射

研究概要

音響と有毛細胞の関係検討の手始めとしてモルモットの蝸牛および、前庭の有毛細胞を単離したところ,外有毛細胞は,ほぼ正常形態のものがえられたが,内有毛細胞,前庭感覚細胞は球状に膨化しやすく,時間経過と共にその正常形態を維持するのが難であった。ファロイジン染色によるF-アクチンの分布は、外有毛細胞では感覚毛、蓋板、蓋板下部組織、細胞側壁、細胞基底部、細胞質内に認められたが、内有毛細胞では感覚毛、蓋板内外の部位では認められなかった。I型前庭感覚細胞ではその蓋板下部組織にもF-アクチンの存在を認めたことより、外有毛細胞のみならず、I型感覚細胞にもその頸部での運動性が示唆された。内リンパ水腫モルモットに120db,1KHz,2時間の純音負荷を行なったところ、第3-4回転の蝸牛血管条毛細血管に血管収縮が認められ、同部の蝸牛有毛細胞の部分的消失が観察されたことより内リンパ水腫は内耳の易受傷性を高めることが示唆された。
誘発耳音響放射の研究では、聴力正常者に1KHz Tone Burst負荷でその持続時間を変えて検討したところ、誘発持続時間は誘発耳音響放射波形に基本的には影響を与えないことが判明した。また動物実験による薬剤負荷の検討で、塩酸リドカインおよびル-プ利尿剤によりその反応波形が変化することが判明した。

研究成果

• [文献書誌] 中井義明: "騒音性難聴" 臨床成人病. 19. 1020-1023 (1989)
• [文献書誌] 山根英雄,中井義明,小西一夫,坂本平守,井口広義,高橋研一: "有毛細胞単離の試みとその細胞骨格について" Audiology Japan. 32(5). 697-698 (1989)
• [文献書誌] 坂下哲史,中井義明,八川公爾,久保武志,箕輪靖弘: "刺激音の持続時間と誘発耳音響放射の波形変化に関する検討" Audiology Japan. 32(5). 387-388 (1989)
• [文献書誌] 小西一夫,山根英雄,八川公爾、坂本平守,松田泰明,中井義明: "末梢前庭器への硫酸カナマイシンの移行" Equilibrium Research. supple5. 54-58 (1989)
• [文献書誌] 杉田雅彦,中井義明,枡谷治彦,森口誠,松永一博: "脳幹の血管分布とその特殊性" Ear Research Japan. 20. 221-222 (1989)
• [文献書誌] 八川公爾,中井義明,坂下哲史,久保武志,箕輪靖弘: "モルモット耳における誘発耳音響放射の薬剤負荷による変化について" Audiology Japan. 32(5). 399-400 (1989)
• [文献書誌] 八川公爾,中井義明,坂下啓史,久保武志,箕輪靖弘: "モルモット耳における誘発音響反応に関する検討" Ear Research Japan. 20. 199-200 (1989)
• [文献書誌] 松永一博,中井義明,枡谷治彦,杉田雅彦,森口誠,岡本純一: "内リンパ水腫と内耳血管" Ear Research Japan. 20. 251-252 (1989)
• [文献書誌] 森口誠,中井義明,枡谷治彦,杉田雅彦,松永一博: "内耳血管の発達について" Ear Research Japan. 20. 85-86 (1989)
• [文献書誌] 坂本平守,山根英雄,小西一夫,松田泰明,井口広義,中井義明: "胎生蝸牛とその薬物移行" Ear Research Japan. 20. 69-70 (1989)
• [文献書誌] 坂本平守,山根英雄,小西一夫,井口広義,杉本緑,中井義明: "音響と蝸牛血流変化-第3報-" Audiology Japan. 32(5). 701-702 (1989)
• [文献書誌] 中井義明,森満保,斎藤等 編: "感音難聴治療の手引き" 金原出版(東京), 274 (1989)