研究課題
一般研究(C)
実験動物の強大音(100ー125dBSPL)3時間暴露による内耳鋳型走査電顕像観察、および免疫組識学的検討よりライスネル膜付着部の蝸牛管外側壁、らせん隆起各部の毛細血管、らせん血管および血管条毛細血管の一部に血管収縮を思わせる血管腔の狭小が、ほぼ全例に認められた。特に血管条毛細血管の循環障害は比較的早期にかつ著明に生じていた。これら血流障害は時間経過と共に徐々に改善するも、正常状態に復するには24時間以上必要とすることが明かにされた。一方70ー80dBSPLの比較的生理的許容範囲と思われる強さの音響を20分暴露した群では、上記毛細血管には明かな循環障害は認められなかった。これら実験結果は蝸牛内循環障害が臨床上認められる一過性聴力障害の原因であることを強く充唆するものである。内リンパ水腫はメニエ-ル病をはじめ、内耳機能不全が生じた場合に惹起される病態であるが、短時間であれ強大音響が負荷されると、蝸牛有毛細胞障害が強く生じることが明かにされた。この場合、グリセロ-ルなどの浸透圧利尿剤などがその障害軽減に役立つことが認められた。誘発耳音響放射の研究では、聴力正常者に1KHz tone burstの負荷を持続時間を変えて与えて検討したところ、誘発持続時間は誘発耳音響放射の波形には変化を与えないことが判明した。一方メニエ-ル病をはじめとする内リンパ水腫を有する患者の誘発耳音響放射の周波数分析の検討で、これら患者の主周波数は刺激周波数より低い傾向があることが観察された。また、動物実験による薬剤負荷の検討で、塩酸リドカイン、およびル-プ利尿剤が誘発耳音響放射の波形を変えることが認められた。これら蝸牛病態を踏まえた上で、音響障害患者に当科考案のVL療法を行い治療効果を統計的に検討したところ、その有効性が認められた。
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