研究概要 |
本年度は主に網膜内境界膜を中心とした網膜硝子体間の荷電関門を形態学的に証明することにした。網膜内境界膜の荷電状態を形態学的に観察するためには,浸漬法が可能なトレ-サ-物質が必要である。そこで今回polyethy lenemine(PEI)という陽イオントレ-サ-を用いて,PEIの分子量,濃度,浸漬時間,使用する緩衝液および固定液らを変えて検討し,超薄切片法,透過型雲顕により網膜内境界膜の陰性荷電部位の観察に成功しまた眼球の部位別に陰性荷電部位の状態を検討できた。 摘出した成熟白色家兎の眼球を視放部,髄翼部,周辺部に分けてPEI溶液に浸漬した。前記のごとくPEIの分子量,濃度,浸漬時間,緩衝液を変えて比較した。使用する薬剤はすべてpH7.4,400mOsmに調整した。超薄切片を作成し,透過型電子顕徴鏡にて観察した。結果は、視放部と髄翼部では,分子量1800のPEI粒子が網膜内境界膜の緻密層から透明層にほぼ均等に付着していた。PEI粒子の直径は平均20mmで透明層では、40〜50mmの間隔で並んでいた。周辺部ではPEI粒子の分布が、緻密層および透明層とも疎で,不均一に付着していた。分子量600のPEI粒子はミュラ-細胞中に侵入し傷害を与えていた。このようにPEI粒子の分布は眼球の部位により差がみられ,網膜硝子体間の電気的な関門は、網膜後極部が主であると推察できた。 一方本年度は、血液または血清を硝子体中に注入した後の硝子体ゲルの変化を走査型電子顕微鏡ご観察し,硝子体ゲルの変化(ことに液化)を観察できた。またミュラ-細胞の基底面のモザイク模様を眼球の部位別に観察できた。このモザイク模様は、眼底後極部と周辺部で異っていた。
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