カハル間質核はCarpenter(1970)により後交連核、ダークシェビッツ核と共にAccessory oculoinofor nuclei(AON)と称される。カハル間質核の出力系で、外眼筋諸核への投射に関しては、内直筋支配域以外の動眼神経核と滑車神経核に線維を送るといわれている。一方、電気生理学的研究ではカハル間質核の刺激で上下および回転性の眼球運動を誘発されることが報告されている。今回、我々は逆行性軸索輸送されるHorseradish peroxidase(HRP)を動眼神経核および滑車神経核に注入し、AONの中でも特にカハル間質核を重点に置き、観察されるHRP反応陽性細胞の分布、形態を検討した。実験動物として成熟ネコを用い、脳定位的に動眼神経核および滑車神経核に50%HRPを注入した。48時間の生存期間の後、経心的に灌流固定した。ただちに30%ショ糖液に浸し、厚さ50μmの凍結切片を作製した。HPR反応はTMB法を行い、明視野および暗視野証明下に観察した。その結果、AONの中では動眼神経核注入群で両側カハル間質核、後交連外側核にHRP反応陽性細胞が観察され、滑車神経核注入群で両側カハル間質核に観察された。両注入群にて観察された起始細胞は形態的に類似していた。他の部位への出現は従来の報告のごとくであった。HRP反応陽性細胞の分布に関してはカハル間質核の吻側から尾側に至まで均等に分布し、核内においての集合性は認められなかった。 今後は順行性軸索輸送されるWheat germ agglutinin-HRPをカハル間質核に注入する実験を行ない、動眼神経核および滑車神経核への投射様式の検討を行なう。
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