研究概要 |
カハル間質核が垂直眼球運動系に重要な位置を占め,ネコを対象とした動眼神経核および滑車神経核への逆行性軸索輸送される物質の注入実験で両側のカハル間質核の神経細胞に標識物質を認めることが出来,両神経核注入群共に大小2群の神経細胞に区分された。それによると,動眼神経核注入例では小細胞に相当するものが22.80±4.13μm,大細胞に相当するものが36.67±3.17μmであった。滑車神経核注入例では小細胞に相当するものが19.07±4.07μm,大細胞に相当するものが39.17±3.56μmあり,カハル間質核の神経細胞が動眼神経,滑車神経核に直直接連絡し,神経細胞に差異はなく,カハル間質核に混在していることが認められた。さらに眼窩内にシナプス越え能を有する物質であるWGAーHRPを注入することで,両側のカハル間質核に標識細胞を認め,脳定位的にその位置を確認した。今回はカハル間質核からの投射様形を知る目的で,順行性物質のWGAーHRPの注入実験を行った。カハル間質核に注入したWGAーHRPは両側の動眼神経核吻側で腹内側を中心に,また滑車神経核に不十分な所見ながらも神経終末が観察された。このことは逆行性物質の注入実験から得られていた直接連絡があることを再確認したこととなった。 カハル間質核は動眼神経核吻側に近く,中脳灰白質の腹側に存在し,眼窩内への注入実験で得られた結果からでも,吻側から尾側までネコで約1〜1.5mm,ラットで約0.5mmほどの長さを持っているにすぎない。そのため,カハル間質核への針の刺入は可能であるが,注入量に関しては全実験例においてカハル間質核を越え拡がっていた。カハル間質核を越えて拡がらず,ネコで1mm以内,ラットで0.5mm以内の限局した注入となると技術的な面で困難さが生じてくることから,これら問題を解決した手技の改善を必要とすることが課題となった。
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