研究概要 |
1.ヒトCD_4陽性リンパ球にて培養したヒト免疫不全ウイルス(HIV)よりGP41およびGP120を精製し、ウサギ、マウスに免疫して型のごとく、抗体(ポリクローナル,モノクローナル)を作製した。 2.南カルフォルニア大学眼科のRao教授より供与された後天性免疫不全症候群(AIDS)患者の眼球切片10検体について、病理学的、免疫組織学的検討を行なった。 3.HIV抗体陽性者で虹彩毛様体炎がみられた2症例より、前房水をtap(採取)し、浮遊細胞について免疫病理学的に検討を行なった。 以上の実験より以下の結果を得た。 1.HE染色を施した眼球切片において、ウイルスに起因すると思われる網脈絡膜病変、網膜血管炎が認められた。 2.抗サイトメガロウイルス抗体を用いた免疫酵素抗体法で、サイトメガロウイルス抗原陽性細胞が、網膜、血管内皮細胞に認められた。 3.作製した抗HIVポリクローナルおよびモノクローナル抗体を用いた免疫酵素抗体法および蛍光抗体法では、AIDS患者の眼球切片からはHIV陽性細胞は検出されなかった。 4.HIV抗体陽性者における前房水中の浮遊細胞はGP120のポリクローナル抗体で陽性を示す細胞が認められたが、GP120およびGP41のモノクローナル抗体では陰性であった。抗サイトメガロウイルス抗体による検索でも陰性であった。 以上の結果より、AIDS患者におけるウイルス性網膜ぶどう膜病変の起因ウイルスは、サイトメガロウイルスが主であると考えられ、HIVとの複合感染はないと思われた。しかし、虹彩毛様体炎の細胞がポリクローナルの抗HIV抗体と反応を示したことから、今後抗HIV抗体の特異性の再検討をする予定である。
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