近交系の老化促進モデルマウスSAM-R/1(senescence accelerated mouse-resistant/1)およびSAM-P/2(senescence accelerated mouse-prone/2)を用いて歯牙および歯周組織の加齢変化を検索した。2系統とも臼歯部の歯槽骨は加齢に伴い消失するが、その程度はP/2が1カ月齢以降常に高度であった。しかし、組織学的には好中球浸潤を主体とした歯肉炎、接合上皮の深部への増殖、軽度のポケットの形成があるのみで、歯垢や歯石の沈着はなく、ヒトでみられるような慢性辺縁性歯周炎はなかった。マウスの歯槽骨の消失に影響すると思われる因子の中で、今回は臼歯の萌出の程度を測定した。臼歯の萌出を現すものとして根尖部セメント質幅を測定したところ、それらは両系統ともみかけ上の歯槽骨の消失値の約半分を占めていたが、常にP/2の方が高度であった(図1)。次にSAMに5日間隔で2回EDTA鉛を投与し、新生骨および新生象牙質を標識し、臼歯部歯槽骨と併せて切歯を観察した(図2)。歯槽骨頂には4カ月齢までは骨の添加がみられたが、6カ月齢以降は歯槽骨は高くならなかった。また切歯の萌出速度は4および6カ月齢でP/2が有意に早かった。 以上より、臼歯および切歯の両者で歯の萌出速度がP/2では促進されていることを示しP/2とR/1の臼歯の萌出速度の差が臼歯部におけるみかけ上の歯槽骨消失の差の大きな原因である可能性を示した。今後歯槽骨の骨量を定量的に検索し、骨粗鬆因子についても検討する予定である。
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