これまでの研究結果、老化促進モデルマウス(SAW-P/2)は歯および歯周組織についても老化促進の徴候を現すユニ-クなマウスであることが判明した。すなわち、SAMの切歯には加齢に伴いエナメル質橙赤色の焼失、エナメル質低形成、短いあるいは長い歯、破析等の種々の形態異常がみられ、これらの発生頻度はコントロ-ルのR/1よりP/2が高く、発生時期もP/2が早かった。また、臼歯部では両系統とも第3太臼歯が加齢と共に脱落し、この頻度は13カ月齢以降約15%となった。また種々の月齢のSAMのさらし骨を観察すると歯槽骨は加齢と共に消失した。これらの原因はヒトでみられるような辺縁性歯周炎によるものでなく、臼歯の持続的な萌出によるみかけ上の歯槽骨の退縮、咬合性外傷、歯肉炎などが原因と思われた。 種々の月齢のSAMで臼歯の根尖部セメント質幅を測定して推定した臼歯の萌出の程度は、1カ月齢以降老齢群に至るまでP/2がR/1より高度であった。一方、切歯においては4から6カ月齢群まで象牙質形成量はP/2がR/1より高度であった。以上の結果からP/2系に何等のセメント質および象牙質形成促進因子が内在するのではないかと考えられた。SAMのP系に活動性の低下、脱毛、白内障、脊柱湾局等の老化徴候が早期に出現することを考え合わせると非常に興味深い現象と思われ、さらに検索する予定である。 SAM-P/2を用いて、アミロイド(AS_<sam>)の口腔内の沈着部位、加齢に伴う沈着量の推移を統計的、免疫組織学、電顕的に検索した。アミロイドの沈着は舌、歯肉、頬粘膜、口蓋などの粘膜下、小唾液腺周囲、一部に筋層などにみられ、その量は加齢に伴い増大した。アミロイドが沈着することにより、舌の運動性、味覚、唾液の分泌が傷害されると思われた。
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