本研究は免疫組織化学的手法を用いて歯胚基底膜構成成分の組成とその局在、ならびにこれの代謝について検索し、基底膜の歯牙形成における意義を明らかにすることを目的とする。 本年度は、琺瑯芽細胞による基底膜の吸収消火機構を明らかにするために、基底膜構成成分の一つであるIV型コラ-ゲンの局在とランソゾ-ムのマ-カ-酵素である酸性ホスファタ-ゼの局在を免疫組織化学と酵素組織化学の同時染色法を用いて検索した。 光顕的には、内琺瑯上皮と歯乳頭との間に分布する基底膜にIV型コラ-ゲンの反応が認められる。この反応は切端側に向かい漸次減弱し、分化期琺瑯芽細胞の部位に至るとほとんど認められなくなる。酸性ホスファタ-ゼ活性は、発育端寄りの内琺瑯上皮にはほとんど観察されないが、切端側に向かい漸次増強し、分化期琺瑯芽細胞で最も強くなる。とりわけ、そのゴルジ領域と細胞遠心端に強い反応が認められる。電顕的には、IV型コラ-ゲンの反応産物は基底膜暗帯とこれに付着する微細線維、および細胞遠心端に出現する被覆小窩に認められる。分化期琺瑯芽細胞の部位では基底膜は所々で断裂し、これに種々の程度の反応が認められる。さらに細胞遠心端に形成された被覆小窩と不規則で深い陥凹に反応産物が観察される。酸性ホスファタ-ゼ活性は、内琺瑯上皮細胞の細胞遠心端部に出現する小胞に認められる。同小胞は除々に大きさと数を増し、分化期琺瑯芽細胞ではこれらが多数に観察され、しばしば先の被覆小窩や陥凹に著しく近接して分布している。 以上より、基底膜の主要構成成分であるIV型コラ-ゲンは分化期琺瑯芽細胞遠心端に形成された不規則な陥凹と被覆小窩を介して吸収され、細胞内でライソゾ-ムにより分解消化されることが明らかにされた。
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