研究概要 |
本研究では、動物の舌に創傷(2mm舌尖切除)を形成し、その舌の創傷治癒過程における上皮の変化を病理組織学的に検索した。実験動物にはハムスタ-を用い、それらを処置の違いによって次のような6群に分けた。なお、塗布溶液には蒸留水(DW)と1%:Trp-P-2・DWを用いた。 第1群:DW塗布(3回/週、4ヶ月間)→創傷→DW塗布(連日15日間)第2群:Trp-P-2祖父(3回/週、4ヶ月間)→創傷→Trp-P-2塗布(連日15日間)。第3群:Trp-P-2塗布(3回/週、4ヶ月間)→創傷→無塗布(連日15日間)。第4,5,6群は創傷を加えずに無創傷とし、それ以外はそれぞれ第1,2,3群と同様な処置を行った。各群の動物は創傷(あるいは無創傷)後、15日目に屠殺し、舌組織を光顕的に観察した。 本実験の結果、第1,2(1匹以外)、3群では上皮に過角化あるいは錯角化がみらされたが、著名な上皮性異形成はみられなかった。第2群の1匹の上皮には軽度の上皮性異形成がみられた。また、第4,5,6群では上皮は正常な所見を示した。前年度において、著者はハムスタ-の舌にまずはじめに創傷を形成したのち、Trp-P-2溶液を週3回、4週間塗布した後、さらに、同じ部位に再び創傷を形成して、15日間無塗布あるいは連日Trp-P-2溶液を塗布した実験結果をすでに報告した。その結果では、舌には著明な上皮性異形成の変化が生じていた。したがって、本実験の結果から、無創傷の舌に変異原物質であるTrp-P-2を4ヶ月間塗布した後、舌に創と傷を形成して、その部位にさらに15日間Trp-P-2を塗布しても、舌には著明な上皮性異形成の変化は生じないことが分かった。このことから、舌における著明な上皮性異掲載の発生には、Trp-P-2の塗布とともに創傷の時期やその回数が重要な鍵を握るものと考えられた。
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