1)酵母や糸状菌から緩和な条件下(0℃、5min)で、無水フッ化水素菌体処理法により選択的に細胞壁のみを破壊し、酵素タンパクのみならず、RNAやDNAが、生物活性を保持した状態で抽出できた。 a.本法により糸状菌C.gracileからintactなデキストラナ-ゼが抽出できた。 b.本法により抽出されたC.gracile RNAの翻訳活性は反応時間およびRNA濃度に依存性であり、その翻訳産物のimmuno-blotからintactなデキストラナ-ゼが検出された。 2)本法によりC.gracileやC.albicansから抽出されたDNAは20ー40Kbの分子量を持ち、制限酵素にsensitiveであり、T4ligaseによりligationされた。 3)本抽出法によりDNAキラ-プラスミドやselective markerをもつプラスミドで形質転換したS.cerevisiaeからDNAを抽出し、proplast法で抽出したDNAと形質転換能を比較すると全く差が認められず、この事は、本法で抽出されたDNAプラスミドは、E.coliのtransformationに適用でき、chromosomalDNAより低分子のプラスミドDNAもintactな状態で抽出できることを示している。 1〜3)の結果から本法は、酵母や糸状菌の遺伝子クロ-ニングおよび未知のプラスミドベクタ-のscreeningに応用でき、これまで菌外破壊が困難であり、敬遠されてきた糸状菌の研究に貢献できると同時に微生物菌体からの有用物質の工業的生産にも適用できる斬新な菌体処理法と考えられる。 現在、本抽出法の応用として糸状菌C.graeileデキストラナ-ゼのcDNAのクロ-ニングを重点的行っており、デキストラナ-ゼのN未端アミノ酸配列を参考にして合成プロ-ブを、またC.grocile mRNAからcDNAライブラリ-を作製している所である。
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