研究概要 |
齲食の主病原因子はmutans streptococcusが細胞外に産生するグルカン合成酵素群である。この酵素群は蔗糖からフラクトースを遊離すると共にグルコースを重合して不溶性粘着性グルカンを合成する。この様な不溶性粘着性を示すグルカン合成は、α-1,6結合を主鎖とする水溶性グルカンを合成する酵素(GTF-S)とα-1,3結合を主鎖とする不溶性グルカンを合成する酵素(GTF-I)との共同作用に起因することが知られている。 遺伝子組み換え技術は酵素タンパク質の構造と機能を解明するのに有力な技術である。今日までにmutans streptococciの不溶性および水溶性グルカン合成酵素遺伝子の全塩基配列を決定した報告がある。しかし、組換え大腸菌の発現蛋白の収率が良くないためか、発現蛋白の酵素反応機構に関する詳細な報告はない。 本研究では、Streptococcus sobrinusのGTF-I酵素遺伝子をクローニングし、このリコンビナントGTF酵素を用いて、GTF-I酵素の構造と機能を検討した。 ベクターpUC18で作成したS.sobrinusジーンバンクを抗GTF-I血清でスクリーニングしたところ、免疫反応が陽性を示す5クローン(AB1-5)を得た。そのうち2クローン(AB1とAB2)の発現蛋白は非水溶性グルカン合成能とデキストラン結合能を有しているが、他の3クローン(AB3,4,5)はグルカン合成能を欠くが、デキストラン結合能を持っていた。これらの結果はS.sobrinusのGTF-I酵素には2つの機能領域があることを示唆した。
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