研究概要 |
本研究では連鎖球菌、特にミュ-タンス群連鎖球菌の菌体表層抗原について、本菌群の8つの騰清型株を抗原とし作製した特異性の明確な単クロ-ン抗体(MAb)を用いて解析を行い以下の知見を得た。1.血清型a特異的抗原となる185Kダルトン表層糖蛋白抗原cri-proteinを見出した。抗原決定基は糖側鎖上のマンノサミン類似構造。2.血清型b特異的抗原はリポタイコ酸であり、抗原決定基はガラクト-ス。3.血清型c,e,f共通(S.mutans菌種特異的)抗原は細胞壁多糖体であり、抗原決定基はN-アセチルグルコサミン構造。4.血清型g特異的ではあるが、本血清型内で亜型を生ずる蛋白質抗原が存在する。5.血清型d,g,hに共通な抗原は細胞壁多糖体であり、その抗原決定基はラムノ-ス及びβ結合により他成分に連結したガラクト-ス構造を含む。6.血清型a,d,hに共通な抗原も細胞壁多糖体であり、その抗原決定基はガラクト-スα1→6グルコ-ス構造である。また1〜6の知見を得る過程において、全菌細胞、細胞壁多糖体、及び蛋白質抗原を固相化しての酵素免疫測定法(EIA)を応用した、連鎖球菌表層抗原-MAb間の反応性の効果的解析系を確立した。さらに得られたMAbが認識する抗原決定基構造の解析に競合EIAを応用して、常法として用いられる競合定量沈降反応によった場合と同等の信頼性が高い解析結果を得、抗体の認識する多糖抗原構造解析のための普偏的手法として競合EIAの有用性を証明した。最後に、これまで得られたMAbを用いたEIAによって、ミュ-タンス群連鎖球菌臨床分離株の菌種同定を試みたところ、簡便・迅速で正確かつ再現性の良い同定結果を得ることができた。以上のように2ケ年の研究の結果、ミュ-タンス群連鎖球菌の菌体表層抗原について新しい多くの知見が得られ、当初の計画はほぼ全て達成されたが、ここに得られた新しい知見や方法論を基礎としてより一層の研究の展開が望まれる。
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