研究概要 |
1.カルモジュリン阻害薬であるトリフルオペラジン(TFP)とW-7はイソプロテレノ-ル(ISO)やDBcAMPによるアミラ-ゼ分泌を強く抑制した。カルバコ-ルによる分泌も抑制されたが、その効果はISO分泌に対するほど大きくなかった。対照薬であるW-5の効果は微弱であった。 2.TFPとW-7はISOによるcAMPの上昇にほとんど影響を与えなかった。 3.細胞形態に及ぼすTFP,W-7,W-5の効果を電子顕微鏡レベルで観察した。TFPやW-7で処理した細胞では管腔膜上の微絨毛が消失し、基底側部の細胞膜表面が平滑になった。TFPやW-7で処理した細胞をISOで刺激すると管腔は拡大したままとなった。TFPやW-7の作用はアクチン繊維重合阻害剤サイトカラシンDの作用と部分的に類似していた。 4.ISO刺激によるアミラ-ゼ分泌はEGTA前処理により有意に低下した。Ca^<2+>で前処理すると分泌反応は増大した。細胞透過性Caキレ-ト剤BAPTA-AMもISOによるアミラ-ゼ分泌を強く抑制した。 5.細胞内Ca^<2+>濃度(〔Ca^<2+>〕_i)に及ぼすISOの効果についてfura-2を用いて調べた。1μMISOは〔Ca^<2+>〕_iにほとんど影響を与えなかったが、より高濃度では〔Ca^<2+>〕_iの上昇がみられた。ISOの〔Ca^<2+>〕_i上昇作用はαー遮断薬フェニレフリンで最も効果的に抑制されたので、βー受容体刺激を介する反応ではない。 6.W-7やW-5はゆっくりとした〔Ca^<2+>〕_iの上昇を起こしたが、両者の効果に差はなかった。カルバコ-ルによる〔Ca^<2+>〕_iの上昇はW-7やW-5で抑制されなかった。 カルモジュリンはアミラ-ゼ開口分泌に伴う細胞形態の変化や膜運動の調節に細胞骨格系を介して関与している可能性が高い。その際、顕著なCa^<2+>動員を必要とせず、restingな〔Ca^<2+>〕_iでカルモジュリンは充分機能しているのかも知れない。
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