研究概要 |
前年度において、野生親株細胞のミトコンドリア(Mt)の分離・精製法を確立した。さらにその方法で調整したMt標品からMt-DNAを抽出し、その制限酵素地図を構築することができた。そこで今年度においては、親株でえた成果を基に呼吸欠損変異株のMt-DNAの分析を行なった。 先ず親株の場合と同様に、分画遠心の途中にDNase処理を加えた方法並びに加えない方法で精製したMtからDNAを抽出した。その結果いずれの場合も、アガロ-ス・ゲル電気泳動でやや広がりのある高分子DNAを調整することができた。このDNAを数種の制限酵素(EcoRI,PvuII,HindIIIなど)で分解し、ゲル電気泳動したところ、分解産物はゲル全体に広がり、特定の分子サイズのDNA断片は検出されなかった。繰り返し行なった実験でも同様の結果であった。変異株でこのようなことが生じた理由として、(1)変異株のMtはクリステを欠く退化構造であるため、遠心分画で野生親株のMtと異なる挙動を示し、Mt標品に核の混入が多くなる、(2)変異株ではMt-DNA上の制限酵素切断部に大きな変化が起き、その結果制限酵素分解で特定部位の切断が起こり易くなった、の二つが考えられる。こられのうち、前者の可能性が高いと推察している。 現在、DNaseを用いない方法で調整したMt標品からDNAを抽出し、CsCl密度勾配遠心に懸けて目的のMt DNAを混在している可能性のある核DNAから分けて採取し、このDNAの制限酵素分解分析を行なっている。この方法で変異株のMt-DNAの制限酵素地図の構築が可能となるであろう。
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