63年度の設備品であるワークステーション(東芝J-3100GT)、波形解析ソフトウェアー、デジタルプロッターおよびプリンターなどは既に納入が終り、既存のセグメント長サーボコントロール装置およびディジタルオシロスコープなどを組合わせ、新しい筋力学特性解析システムを構築した。 現在コマンドシグナルとして、ステップ状、正弦波状および疑似ランダムノイズ波形を用い、標本中央部の微小セグセメント長(従来のように標本全長を対象にした場合、両端摘出部分の損傷のため測定誤差を生じる)を制御し、その張力応答を解析中である。等尺性収縮張力は、咬筋、側頭筋、顎二腹筋ともp.Ca6.6から5.8の範囲でCa^<2+>濃度の上昇と共にシグモイド状に増大した。しかしながら、Ca^<2+>濃度で3筋の発生張力を較べた時、その値は側頭筋>顎=腹筋>咬筋の順であった。ステップ状および正弦波状信号を用いた張力応答の解析(アナログ計測)からは、1)顎二腹筋は咬筋および側頭筋に比べて、ミオシンクロスブリッジのアクチンへの結合解離速度が遅いこと。2)同じCa^<2+>濃度で比べた場合、顎2腹筋の最大短縮速度およびATPase活性は他の二筋より低いことと示唆する結果を得た。 解析時間を極力短くするため、従来のアナログ計測に加えて、疑似ランダムノイズ信号を用いたディジタル信号処理計測を行っているが、駆動信号としてこのようなM系列信号を用いてFFT法でシステムの動特性(周波数特性)を推定する場合、波形の切り出しに伴う歪みが生じる。又現在、上記のアナログ計測より得られた結果を参考にしつつ、時間窓に伴う歪誤差を検討し、本実験に最適な時間窓を探究中である。
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