本研究の目的は、long junctional epithelium(LJE)の成立状況を検討し、さらに、その存在意義について明らかにすることである。 1.LJEgの形成実験、実験材料は、雑種成犬の小臼歯を用いた。まず、歯肉溝内切開を行い、歯肉剥離後、歯槽骨を削除してセメント・エナメル境より約4mmの根面を裸出させた。ついで、裸出させた根面の線維成分を完全に除去し、その根面に上皮性接着物質であるラミニン塗布を行った。さらに、根周囲の歯根膜および歯槽骨をフィルターメンブレン(FM)で被った。その後、歯肉弁をもとの位置に戻して縫合した。一方、対照群はラミニンの塗布を行わないものとした。実験群、対照群いずれも処置後週3回のプラークコントロールを実施した。形態学的観察には、処置後2、4、8週経過時の光顕標本を作製し、LJEの形成状況を検索した。その結果、対照群では処置後の各期間で根表面にLJEがみられたが、その形成量は少なかった。一方、実験群では各期間の歯根セメント表面には、約2〜3mmのLJEが接しているのが認められた。処置後8週時においてもLJEが観察されたが、同時に歯肉縁が退縮して、LJEの長さは相対的に減少していた。これらの結果からLJEのモデルとして本処置が有効であり、しかも歯周炎の再発実験には処置後4週のLJEが最も適当であることが明らかとなった。 2.歯周炎再発実験、LJEに対するプラークの影響を検討することを目的として行っている。実験材料は、生後1年のビーグル犬の小臼歯部を用いた。まず(1)のLJEの形成処置を行い、処置後4週時より、水道水にて柔らかくした固形試料で飼育し、プラークコントロールを中断した。現在、LJEの形成処置を終了し、プラークコントロール中断後、0、1、2、4週経過時に、臨床的には歯垢付着指数、歯肉炎症指数などを評価するとともに、各期間の光顕ならびに電顕標本を作製している。
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