本年度の研究実施計画に従って、正常有歯顎者および顎変形症例について、発音時の口腔運動とリアルタイム音声周波数分析表示装置(SSD-2)による声紋とを同時に記録し、解析を開始した。 1.有歯顎被験者10名に発音検査語表を発音させ、MKG上の切歯点、または顔面側貌と声紋とを音声と同時に2台のテレビカメラでハイスピ-ドビデオ(HSV-200型)によって高速記録した。 2.得られたテ-プを低速再生し、モニタ-上で切歯点、口唇、皮膚上の標点の座標を入力し、コンピュ-タ-に記録し、演算する。この時、声紋像を参照して子音発音時点を求め、調音運動開始から発音中の各標点の運動経路および運動速度を解析した。 2.顎変形症例について、同様の分析方法によって、(1)術前、(2)下顎後退手術後、(3)補綴処置による咬合改善後の発音運動を子音発音時点の前後を含めて、全経過の解析を行った。 3.以上の結果から、子音発音前、および、発音中の口腔の運動の動態がそれぞれ異なることが明かになった。そのため、従来の子音発音中の下顎位(発音位)だけの観察によるよりも、はるかに調音運動の実態を把握できるものと推測される。 4.これらの所見から、調音動作のスム-スさを判定するためには、音発生中のみならず、それ以前の口腔の動態を観察することが極めて重要であると思われる。 そこで、運動経路の複雑さを表現するため、方向変化角度の累計および平均角度、移動経路の距離累計などのパラメ-タ-を設け、これらの演算をコンピュ-タ-により処理するソフトを開発中である。
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