正常有歯顎者および顎変形症例について、発音時の口腔運動とリアルタイム音声周波数分析表示装置(SSDー2、平成2年度からはDSPーSonaーGraph)による声紋とを同時に記録し、解析した。 1.被験者に発音検査語表を発音させ、MKG上の切歯点、または顔面側貌と声紋とを音声と同時に2台のテレビカメラでハイスピ-ドビデオ(HSVー200型)によって高速記録した。 2.得られたテ-プを低速再生し、モニタ-上で切歯点、口唇、皮膚上の標点の座標を入力し、コンピュ-タ-に記録し、演算する。この時、声紋像を参照して子音発音時点を求め、調音運動開始から子音発音時点の前後を含めて、全経過中の標点の運動経路および運動速度を解析した。その結果、子音発音前、および発音中の口腔の運動の動態がそれぞれ異なることが明かになった。そのため、従来の子音発音中の下顎位(発音位)だけの観察によるよりも、はるかに調音運動の実態を把握できるものと推測された。 3.さらに、調音動作のスム-スさを判定するためには、音発生中のみならず、それ以前の口腔の動態を観察することが有効と思われた。 4.そこで、運動経路の複雑さを表現するため、方向方化角度の累計および平均角度、移動経路の距離累計などのパラメ-タ-を設け、これらの演算をコンピュ-タ-により処理するソフトを開発した。これによって、口蓋裂、顎変形症例などの発音異常者について、咬合改善前後の調音運動のスム-スを比較検討した。 5.リアルタイムの声紋分析表示装置としてDSPーSonagraphを導入したが、これによってより多彩な分析が可能となり、より詳細に音の正否を判定する可能性も期待できる。
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