慢性硬化性下顎骨骨髄炎の診断ならびに治療について 1.臨床的所見:本疾患は下顎骨および周囲組織の激しい疼通およびび慢性の腫脹、開口障害等をくりかえす慢性的な疾患である。一般に抗生剤の効果は一時的であり5年、10年と長期にわたり急性期と緩解期をくりかえすために患者の病悩は大である。経過中に排膿や瘻孔形成がみられることがまれであるために三叉神経痛、顎関節症あるいは非定型顔面痛と誤診されることがあり鑑別診断が重要である。本来感染症でありその起炎菌の1つとしてPropioni bacterium acnesがあげられており、我々の症例中の1例に本菌が分離培養された。また歯牙が原因の1因と考えられるがその本態については明らかにされなかった。 2.診断:診断はX線写真及び病理組織学的検査によりほぼ確定できた。X線写真では下顎骨骨皮質の消失、軽度の骨の腫脹またび慢性の骨硬化像が特徴的であった。CTでは骨髄の消失、強い骨硬化像がみられた。^<99m>Tc-MDPによる骨シンチグラムは病期および病巣の範囲の描出にすぐれた検査方法であり外科的治療の時期の決定や経過観察に有効な手段であることが解った。病理組織学的には骨髄の脂肪変性、消失、層板骨の肥厚、骨硬化、細胞浸潤など非特異的な所見であった。細菌学的に起炎菌の分離培養は困難であるが、1症例のみP・acnesおよびVeillonella・parvulaが検出され、AB-PC、LMOX、LCMなどの抗生剤に感受性がみられた。 3.治療:治療は外来患者に対しては対症的に抗生剤(特に抗嫌気性菌)、抗菌剤、消炎鎮痛剤が投与されたが根治にいたらなかった。保存的治療で効果がみられなかった症例や頻繁に激しい発作をくりかえす場合には手術が行われ比較的良好な結果を得た。手術は外側骨皮質部の除去、灌流装置設置術による抗生剤の局所的投与が有効であった。
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