我々は口腔癌の、術前化学療法としてMTX・5-FUの少量併用投与を行い良好な結果を得ている。15例の口腔癌患者についてこの化学療法を施行したところ、PR10例、MR3例、MC1例、PD1例であった。また病理組織学的な検索を行ったところ周囲組織に浸潤した癌細胞の消失した症例もみられた。 MTX・5-FU併用療法の有用性をさらに検討する目的で、in vitroにおけるcolony forming assayにより口腔扁平上皮癌細胞株(99-22、NA、MSC-3に対するMTX単独、5-FU単独、MTX・5-FU併用のchemosensitevityを実施した。すなわちlog-growth期にある細胞をTrypsinizationにより、single cell suspensionを造り30mmdishに100〜200細胞分注し、24時間培養後、2時間あるいは24時間薬剤を作用させ、fresh mediumにて洗浄後10日〜2週間培養し生残コロニーを数えた。薬剤濃度については体重60kgの50%を全体液量と仮定し現在臨床上用いている薬剤量の体液濃度を算出したところMTXは2.5μg/ml、5-FUは16μg/mlであったのでこれを基準値とした。薬剤作用時間を2時間としたときのsurviving fraction(%)は、Ca9-22ではMTX単独で38%、5-FU単独で35%、MTX・5-FU併用で31%であり臨床の結果を反映しているものと思われた。しかしNAではMTX単独64%、5-FU単独20%、MTX・5-FU併用で32%であり、HSC-3でもMTX単独96%、5-FU単独25%、MTX・5-FU併用で30%であり、5-FU単独の方がMTX・5-FU併用より低い値であった。薬剤作用時間を24時間とした場合でもほぼ同様の結果が得られた。抗癌剤の併用により効果が低下する理由としては、MTXと5-FUの拮抗作用が推察される。今回の実験では同一dish内に同時に両薬剤を投与したが、臨床上はMTXと5-FU投与の間に2時間の時間差を設定している。このことから、in vitroにおりる薬剤の投与方法について現在検討中である。
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