我々は、ヘマトポルフィリン誘導体(HpD)と光照射の併用による殺細胞作用を応用し、顎口腔領域悪性腫瘍の治療を計画している。今回、悪性腫瘍治療の至適条件を見いだす試みの一つとして培養細胞を用い殺細胞作用に関する検索を行った。 HpDはhematoporphyrin dihydrochlorideをLipsonらの方法に準じて調整した。光照射は、1000wスライドプロジェクターを光源として用いた。培養細胞は、外陰部由来扁平上皮癌A431を用い、1×10^4個/mlの割合で接種し、5日目に実験が終了するように計画した。生細胞数は核数をコールターカウンターにして計測することで求めた。 HpD作用後、培養細胞を蛍光顕微鏡を用いて観察した結果、細胞質全体に蛍光を認めHpDが細胞内に取り込まれていることがわかった。ついで蛍光光度計にて細胞内HpD濃度を測定した。またHpD作用後、光照射した細胞では細胞質内に大小の空胞形成を認め時間の経過と共に細胞が死滅していく様子が観察された。 HpD単独投与では、10μg/ml以上の濃度で細胞増殖抑制を認めた。光照射時間を30分間としHpDの作用時間と殺細胞効果について検討した結果、HpD作用時間のCD_<50>は、0.5、1、3時間では、それぞれ1、50、1.05、0.26μg/mlであった。次に光照射時間と殺細胞効果について検討したところ、CD_<50>は1、50、30、60分間では、それぞれ2.60、0.86、0.34、0.20μg/mlであった。 さらに当科で樹立した口腔由来扁平上皮癌3株、唾液腺由来腺癌2株について検討した結果、扁平上皮癌は唾液腺癌より感受性が高かった。 今後、Ne-Heコールドレーザー及びフェオフオーバイドaを用いて腫瘍細胞に対する殺細胞効果を検討するとともに、殺細胞作用の機序の検索を行う予定である。
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