研究概要 |
頭部X線規格撮影法と咬合法を組み合わせた口内法規格X線撮影法を開発して,基礎的検討を行った後,臨床的な歯根長の測定を試みた。その結果,治療経過観察中の測定で歯の長さに長短がみられ,基礎的検討で観察された誤差範囲を越えていることが明らかとなり,臨床的に本観察法は十分でないことが分かった。患者は,平成元年7月から平成3年4月にかけて広島大学歯学部附属病院歯科矯正科においてマルチブラケットシステムによる動的治療を開始した120名の患者(男性29名,女性91名)で,これらの患者のうち36名は何らかの理由により途中で本研究から除外された。また,44名の患者は現在動的治療中で,引き続き観察を継続する。今回の報告では,平成元年7月から平成3年1月の間に動的治療を開始した40名の患者で,治療開始時年齢は11歳から43歳で平均19.0歳についてである。動的治療期間は3カ月から2年7カ月で,平均1年8カ月であった。動的治療終了までの期間の検査回数は3回から13回で平均6.9回であった。観察は3カ月ごとに行った。これらの症例のうち保定時歯根吸収ありとされた症例は26例,疑わしいものが6例,歯根吸収の認められないものが8例であった。歯根吸収開始の時期については治療開始後3カ月以内に起こるものから,1年程度経過してから起こるものまで様々であったが,重篤な吸収を示す症例では,早期に吸収がみられた。このため,動的治療を開始して早期に吸収がみられた場合は,比較的頻繁にX線検査を行うのが望ましいと考えられた。歯根吸収と歯根膜腔や歯槽硬線の幅との関係については,歯根吸収が起こる場合は,この歯根膜腔の拡大が十分起こらず,対応する歯槽硬線も消失しなかったり,逆に厚くなったりすることが分かった。そこで,今後この点をさらに詳細に観察し,症例を増やして学会等で発表していく予定である。
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