昭和63年度は内軟骨骨化を生日後に再現するといわれるWistar系ラット長管骨より得られた脱灰粗骨粉(74ー420μm)をPelletにして、生後30ー40日齢の同種ラットの左右胸部皮下に移植、その周囲に我々が考案した持続的直流定電流刺激装置を包埋し、電流刺激を与えたPelletと非通電群のPelletの形態的変化を追求したが、実験動物が小さいことと、装置のため感染する症例も多く、再現性のある実験系とはなり難かった。 そこで平成1年度は同実験系をin vivoとして雑種成犬の下顎骨に下顎下縁から歯槽部にいたる骨欠損創を作製し、前述の電流刺激装置(生体外で50μA)の陰電極線を骨欠損創を横切るように挿入し、その周囲の骨組織の変化をX線的と組織学的に追求した。その結果電流刺激は明らかに骨欠損創の治癒を促進した。X線的に下歯槽管を圧迫するように陰影像が形成され、組織学的に新生骨梁は電気力線に沿って配列し、通電群の陰電極周囲では非通電群に比べ豊富な新生骨梁と多数の破骨細胞の出現がみられた。この実験系では長期間の通電において新生骨組織は常に活性の高いまま維持され、骨組織の成熟化が阻止される結果が得られた。つまり50μAは初期変化では骨形成を促進するが、長期間では負に及ぼすのではないかとの結論が得られた。in vivoでは骨形成に関与する細胞が同定できない欠点がある。そこでin vitroとして石灰化能を有する骨原性細胞株MC3T3ーE1を用い、骨芽細胞系細胞に及ぼす微小電流の影響を検討した。1、5、10、20μAを選べる直流電流刺激装置を新たに開発し、培養細胞の^<45>Caの取り込みとALP活性を指標にして至適電流値を決定した。その結果5μAを通電したときに最大の45Caの取り込みとALP活性値上昇が観察された。さらに通電側の陰陽電極双方周囲の培養細胞に対照側より有意に^<45>Caの取り込み、ALP活性値の上昇がみられ、電流刺激は直接的に骨芽細胞に影響を及ぼすことが判明した。
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