近年、顎骨欠損、歯槽堤の高度な吸収例に対する骨補填に各種セラミックス材料が開発され、臨床応用されている。今回われわれは、セラミックス材料の中でも物性や生体親和性に優れているとされている結晶化ガラスに着目し、人工骨として臨床応用する目的で、家兎を用いて基礎的検討を行った。実験には30羽の成熟家兎を用い、全麻下に家兎の下顎骨下縁に直径4mm深さ約3mmの骨欠損を2個作成し、一方に粒径0.5ー1mmのCaO-SiO_2-MgO-P_2O_5-CaF_2を組成とする結晶化ガラス顆粒(GCP群)、他方にハイドロキシアパタイト顆粒(HAP群)を填基した。術後2、4、8、12週で動物を屠殺し、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡による検討ならびにX線マイクロアナライザ-を用いて骨との界面の元素の動態について検討した。結果:2週ではGCP、HAP両群ともに母骨と顆粒の間に幼弱な新生骨が形成され、一部は顆粒表面に達していた。4週では多量の新生骨梁が顆粒間、顆粒表面に形成され、8週では母骨に近接した部位ではほぼ全周が骨梁で覆われていた。新生骨梁の発育肥厚および隣接骨梁との癒合が進行し、一部ではハバ-ス層板の形成も認められた。12週では顆粒周囲の骨梁は増加しているものの、ほかの部位では骨梁はやや粗となっていた。GCP群とHAP群を比較すると、わずかにGCP群のほうが周囲の骨形成状態は良好であった。SEM所見では顆粒表面に50μm前後の反応層がみられ、その表層において骨と結合している像が観察された。元素分析の結果では2週、12週ともに顆粒中央から骨の界面に向かうにつれ、Si、Mgは減少し、Pは増加、Caはほぼ一定で、反応層の表層にCa、Pが多く認められた。今回の研究でGCP群すなわち結晶化ガラス顆粒は組織親和性が良好で、早期に骨組織と結合することが確認された。今後更に長期埋入例の検討を行った後、臨床応用を行なう予定である。
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