研究概要 |
歯科用X線装置の品質管理が手軽に行える安価でしかも高性能な測定器の開発を目的として,測定法を確立し,測定に必要なハ-ドウェアとソフトウェアを作製し,その性能について試験した.測定法については,エネルギ-依存性の少ない校正された電離箱線量計を用い,2種類のフィルタ-を透過したX線ビ-ムを照射線量で正しく測定できれば,理論から求めたX線スペクトルによって管電圧,反濾過,半価層が容易に推定できることを示した.しかし,実用上の検出器は,この他に,線量率波形,管電圧波形なども測定できることが望ましい.気体電離箱は応答が遅いのでこの目的には不適当であるが,原理上は応答速度の速い検出器ならばこれも可能となる.そこで,応答速度の速い検出器として蛍光体とフォトダイオ-ドの組合せからなる系について,これを検出器として用いたときの特性を調べた.その結果,希土類蛍光体とフォトダイオ-ドの系が感度,応答速度の点で,X線品質管理機器用検出器として最も優れた特性を持つことがわかった.またこの検出器でX線ビ-ムを計測し,その信号をアンプ増幅後,AD変換して,ラップトップパソコンのラムディスクに取り込み,解析を行ったところ,以下のことが明らかとなった.2種類のフィルタ-を透過したX線ビ-ムの信号強度比を分圧器で校正された管電圧の関数として表すと,管電圧50ー80kVでは信号強度比の対数と管電圧の間で近似的な直線関係が得られ,濾過の影響は僅かであった.また,電離箱線量計で校正した半価層厚さのフィルタ-を用い,種々の管電圧でフィルタ-有無の信号強度比を測定するとその比はほぼ一定値を示し,線質の影響を僅かしか受けなかった.そこでわれわれは理論計算から減弱デ-タを算出し,これを用いて反復法で測定時の総濾過や線質の影響を補正するプログラムを作成した.この補正により管電圧,半価層,総濾過の値が3%以内の近似値で得られた.
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