静脈内鎮静法に使用する薬剤のうちジアゼパムとフルニトラゼパムについて、好中球の殺菌能と密接に関連する好中球化学発光に及ぼす影響を検討した。化学発光の測定は次のように行った。即ち、正常人末梢血をEDTAで採血し、Ficoll-Conray比重遠沈法にて好中球を分離後、Hank's液にて2×10^6個/mlの好中球浮遊液を調整した。好中球膜刺激物質として血清処理ザイモザン(opz)あるいはPhorbol myristate acetete(PMA)を使用し、さらにルミノールを加えて好中球化学発光を測定した。まず第1段階として、好中球浮遊液にジアゼパムあるいはフルニトラゼパムをIn vitroで終濃度が10μg/ml、20μg/ml、40μg/mlとなるように添加し、各濃度での化学発光のpeak intensityを測定し、それらの値をHank's液のみを添加し測定したコントロール値とを比較した。その結果、ジアゼパムおよびフルニトラゼパム添加により、好中球化学発光はOPZ、PMAのいずれにおいてもコントロール値よりも減弱した。その減弱は10、20、40μg/mlの範囲で濃度依存性であった。またジアゼパム添加により、いったん減弱した化学発光はwash outにより速やかに回復する傾向が認められた。第2段階として、ジアゼパムおよびフルニトラゼパムによる鎮静法施行時の血中濃度に近い状態での検討を行った。健常人でジアゼパム0.2mg/kg投与後の血中濃度を測定したところ、ジアゼパムの血中濃度は投与後3分で約15μg/ml、30分後で約3μg/mlであった。その結果に基づき、ジアゼパム、フルニトラゼパムとも終濃度がそれぞれ1、2、5、10μg/mlとなるように添加し、前回同様In vitroで好中球化学発光を測定した。その結果、臨床的な血中濃度においても軽度ではあるが濃度依存性に好中球化学発光が抑制される傾向が認められた。これらのことより、鎮静法施行時にも一時的に好中球による酸化代謝機能が抑制させる可能性が示唆された。
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