血液希釈及び血液希釈、低血圧麻酔併用時の循環動態、臓器血流について検索した。方法は雑種成犬を用い、GOF(0.5%ハロセン)麻酔下で行った。実験は3群に分け、1群は血液希釈のみとし、20ml/kgの脱血後、同量のサリンヘスを投与した。他の2群はサリンヘスによる希釈後、トリメタファン、ニトログリセリンによる平均動脈圧60mmHgの低血圧を併用した。3群とも循環動態、臓器血流は60分間にわたって監察した。 その結果サリンヘスによる血液希釈ではヘマトクリット値は24〜30%に低下したが、循環動態及び臓器血流は60分間維持できた。一方トリメタファンによる低血圧麻酔併用群では平均動脈圧は60mmHgまで低下した。循環動態では心係数、心拍数は減少したが一回拍出量は変化しなかった。全末梢血管抵抗は低下した。肺血管係では肺動脈圧、肺動脈楔入圧は有意に低下したが、肺血管抵抗、中心静脈圧は変化しなかった。心筋の収縮力をみるdp/atMaxは有意に低下した。臓器血流では心係数の低下に伴うと思われる腎皮質血流の減少がみられた。 ニトログリセリンによる低血圧麻酔併用群では平均動脈圧は70mmHgまでしか低下せず調節性においてもトリメタファンに劣った。循環動態では心係数は増加傾向を示したが、心拍数は減少傾向を示した。したがって一回拍出量は変化しなかった。全末梢血管抵抗は低下した。肺血管係では肺動脈圧は有意に低下したが、肺動脈楔入圧、中心静脈圧は変化せず肺血管抵抗は低下傾向をました。dp/atMaxは変化しなかった。臓器血流では腎皮質血流が減少したが、その減少度はトリメタファンよりも軽度であった。 以上より調節性の面ではトリメタファン併用が、安全性の面ではニトログリセリン併用が優れていると思われた。
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