今回は中性子ラジオグラフィーの歯科への反応として、歯し歯科材料および、これらに関する基礎的な中性子ラジオブラフィー(NR)の実験を行い、その結果いくつかの興味ある知見が得られた。実験に用いた歯は健全歯、種々の段階のう歯、充填物のある歯、歯冠修復物のある歯科材料としてはクラウンブリッジ、金属床の義歯、その他歯科に用いられる金属であるAuステップ、Agステップ、Pdステップ、Alステップについて行った。クラウンやインレーような歯冠修復物のある歯のNRにより金属内部のう蝕の状態が観察できた。X線では確認が困難であった鋳造巣をNRにより確認することができた。またレジン中の巣も確認できた。そしてこれらの歯科材料および歯冠物のある歯の巣や空隙を真空装置を用いて試料に水を造影剤として含浸させることによって外部と通じているものかを描出させた。またこの真空装置により試料にGd水溶液を吸収させ歯髄状態の描出ができた。これらのことから、NRはX線が透過しにくい比較的厚い金属内部にある歯の状態と歯科材料の接合状態またその金属自体の巣の様子を歯と同時に観察するのに有効な方法であることがわかった。さらに水やGd水溶液を用いることによって歯科材料の欠陥や歯髄の細部の状態を知るにも有効な方法であることがわかった。また、NRによる欠陥の定量的検出に関しては鉄ステップとポリエチレンステップについて行い、得られた中性子ラジオグラムの写真濃度から識別能について検討した。これらのステップは1mmの透過欠陥と不透過欠陥をつくってあるもので鉄では透過不透過共に40mmまでが識別可能で、ポリエチレンでは不透過が17mm透過が9.5mmまで識別可能である。今後欠陥の大きさの検出限界と位置関係についての検討が必要と思われる。現在、同様の実験についてX線でも波長のちがいによる識別能や、散乱による係数の決定を実験中である。
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