今回は昨年度に引き続き歯と歯科材料の中性子ラジオグラフィとその基礎研究として非破壊検査による欠陥検出能の測定について検討した。非破壊検査の実験材料としては欠陥を作成してある鉄とポリエチレンのステップである。また歯と歯科材料の主なものの線減弱係数を中性子線と30KeVおよび60KeVのX線について計算式より算出した値から実験的に測定を行ったものを考察した。このことより通常の歯科でのX線撮影では厚さ0.5mm以上で実効原子番号20以上の物体では殆ど完全に不透過となり前後の歯の状態および歯科材料との接触の様子の観察は不可能であることがわかった。また中性子線では水素を多く含む有機質性のレジンは透過性が極めて低く、アマルガムや歯科貴金属類の透過性もあまりよくないので内部の観察は困難である。さらに金属床義歯の金属床のように貴金属が含まれておらず、厚みも比較的薄いものではエネルギ-を連続的に可変できるX線ラジオグラフィの方が欠陥や巣の検出には有利である。しかしその分だけ義歯の部位のレジンが完全に透過となり、その部位での映像化はできない。このように実効原子番号に大きな差のある被写体ではX線と中性子のラジオグラムの合成による黒化度の三次元グラフが両者の長所を生かした有効な手段となった。また厚さ1mm以内の鋳造冠や築造体であればX線では観察できなかった内部の状態が中性子では十分に観察可能であった。つぎに散乱断面積と被散乱断面積の比の異なるスラブを用いて欠陥検出能についてスラブ厚変化による欠陥検出限界の解析を行った。この結果、鉄スラブでは1mmのカドミウム、ナイロン、空隙はそれぞれ60mm、37mm、33mmまで識別の可能性があった。またポリエチレンスラブでは1mmのカドミウムおよび空隙では11mmおよび7.5mmのスラブ厚までが識別可能と評価できた。欠陥検出能については今後さらに歯科材料のデ-タを取得するため実験していく予定である。
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